映画の感想とボヤき

人生迷走中の独身女が映画をみて感想を言ったり、感じたことをただ赤裸々に書き記すだけのブログ。ネタバレ全開なので注意。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン[Catch Me If You Can] 感想

詐欺師とFBIのおっかけっこの話。まるでルパンと銭形。本来は敵同士の相手がお互いをひとりの人間として奇妙な友情を交わすお話はやっぱり良いですよね。しかも実話と後から知っておったまげました。

いやぁ、こんなに華麗に人を騙せるなんて単純に頭の良さもですけどなにより肝っ玉が凄すぎます。たとえ私が頭が良くてたくさんお金があったとしてもパイロットや医者や弁護士になりすますなんて…とてもできませんね。しかしフランクの数々の華麗な詐欺行為を見ながら「結局必要なのは金かぁ」とも思いましたが…笑 

 

でもどんなに金や人とのつながりを持って自分を偽っても、彼が本当に手に入れたい、取り戻したかった家族の幸せは帰ってこないし、それ以外は無意味で、詐欺師になってもどんなに天才でも取り戻すことができなかった。そしてどんなに才能があっても、名もない金もない男には金も女も寄り付かないけど、制服や身分をひけらかせば簡単に手のひらを返すこの世への皮肉も面白かったです。


だからこそカールという男に出会えてよかったなと思いました。クリスマスにカールに電話して「他に話す相手がいないんだろう」と図星をさされて動揺する姿は切なくもあり、ただの一人の子供で胸がギュッとなりました。偽りの彼よりも彼自身を追うカールが誰よりも彼を理解していたんだなぁ。

 

最後の最後にカールがフランクを迎えに来てくれて、父の死を知り、逃げ出して、母の現在を知り…。もう彼を突き動かす全てのものが消え、ありとあらゆる手で逃げおおせた伝説の詐欺師はあっさりと降参した姿を見ると切なくて、でもこれだけのことをした天才もたった一人の人間で…。決して珍しくはない両親の離婚ですが、彼は本当に両親が大好きだったんだろうなぁ。フランクが思い浮かべるリビングでの二人のダンス。カーペットのワインのシミなんて彼らの幸せの前ではなんてこともなかったハズなのに。人間は結局生きていくための手段が必要で、選択を迫られたとき…、「利益」を求めてしまうんでしょう。もちろん全ての人がそうではないと思いますが。でもそれは悪い事ではないんです。心の正解と不正解を決めれるのは本人だけですから…。ただ、裏切られた人間の心が傷つく事になるだけです。

 

そして個人的には「偽りの中で生きるのが楽だ」という言葉が印象に残りました。自分も両親は幼い頃にとっくに離婚して家族も離散して、一人になった今。辛いことも沢山あってそれでもどうにか日々生きているのはネット上で別の名前の私がいて、限りなく私だけど少し違った別の「私」がいて、現実の自分なんかよりずっと肯定してもらえる。それが楽しいからかもしれないと思いました。